映画を観ていたら、
「ピアノの音のみで、登場人物の行動を予測させる音楽演出」
を見つけました。
溝口健二監督映画「噂の女」(1954年)
の後半部分で、
登場人物の「雪子」と「的場」が接吻をする場面があり、
その直前の音楽演出に注目します。
映像としては「2人が居る部屋」をまだ映していない状況で
「状況内音楽(シーンの中で実際になっている音楽)」として
「ドビュッシー : アラベスク第1番」が聴こえてきます。
雪子は「音楽学校でピアノを学んでいる」という設定なので、
雪子が演奏していることは明らか。
そして、
その演奏は大きく乱れて不協和音が響きます。
ここまでの映画の内容を観てきて
2人が親密になっていることを把握してさえいれば
「的場が雪子に迫ったんだろうな」
と予測できるでしょう。
後に映像で2人の接吻の様子を映しますが、
不協和音が響いた時点では
「ピアノ音の乱れのみで、2人の状況を演出している」
ということになります。
このような「音楽のみで状況を示す」という演出は
ロマン・ポランスキー監督映画「チャイナタウン」(1974年製作)
など、
他の名作映画でも時々とられているやり方です。
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