「現実感を強調する音声処理」の好例が
中平康監督映画「美徳のよろめき」(1957年)
の劇音楽に見られます。
音声を一瞬ドライにすることによる現実感
映画開始1時間程度のところで、
節子(月丘夢路)のシャワーシーンがあります。
その直前、
服を脱ぎシャワールームへ向かっていく箇所から
サックスソロによる音楽が使われます。
いわゆる、ウェットでムーディーな ”大人の音楽” 。
この音楽の終わり際のみ、
「リバーブ残響をなくす処理」がされています。
それにより、
音声がドライになり一気に現実感が戻ってきます。
そして、”現実音” であるシャワーの音声へ移行。
人が亡くなるシーンに電車の現実音
映画終盤、刺された与志子(宮城千賀子)が息絶えるシーン。
息絶えた瞬間、
大きな運転音とあわせて
病院の窓景色に電車(貨物列車?)が入り込んできます。
この音声演出により、
一気に現実感が強調される効果を感じられます。
本来、人間が亡くなったときというのは
現実を受け入れられない関係者が泣き崩れたり、
もしくは、
ものすごく静かな時間が流れたりするもの。
一方、このシーンでは
音声演出の内容からしても何だかさらっとした印象。
与志子の死というのは
この映画の内容にとって
それほど重要なイヴェントではないからかもしれません。
中平康監督映画「美徳のよろめき」(1957年)は
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◉ 美徳のよろめき