「2人の心情を同時に表現する音楽表現」
というと、
なんだか難しそうに聞こえるかもしれません。
しかし、
成瀬巳喜男監督映画「銀座化粧」(1951年)
のラストでは
この音楽表現をいたってシンプルな方法で実現しています。
石川京助(堀雄二)に想いを寄せていた津路雪子(田中絹代)。
しかし、
雪子の妹である女給京子(香川京子)が
彼と出逢ってたった一晩で婚約したことを知ってしまいます。
雪子の落ち込みを表すかのように
メランコリックな音楽(通常の劇伴、つまり「状況外音楽」)が流れますが、
そこに、
京子がご機嫌に口ずさむ「メンデルスゾーン:春の歌」が
同時使用されます。(状況内音楽)
妹は姉の気持ちを知りません。
姉妹の対照的な心情を
2種類の音楽で同時表現する音楽演出。
ここでの状況内音楽というのは、
「歌」であり、なおかつ「明るい音楽」。
したがって、
あらゆる状況内音楽の中でも
心情をリアルに表現する効果が高いと感じます。
というのも、
ご機嫌のときに
メランコリックな歌を口ずさむ人物はまずいないからです。
そういった意味で
「登場人物が口ずさむ歌」というのは
ある意味「説明的」であると言えます。
ご機嫌のときに
状況内音楽として
「メランコリックな店内BGM」が流れているケースはあります。
一般的に生活の中で耳にする音楽というのは
登場人物の心情とは無関係だからですね。
この辺りが、
数ある状況内音楽において異なる部分でしょう。
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