今回は、
大庭秀雄監督映画「眼の壁」(1958年)
を題材に
いくつかの音楽表現について
取り上げていきます。
■映画「眼の壁」(1958年)の音楽演出
3種類の不吉な音声で状況を
オープニングクレジットの直後、
登場人物の関野(織田政雄)が
湯河原の山中で自ら命を絶つ場面があります。
約70秒間の場面なのですが、
その間、主に3種類の音声が聴こえます。
② 不吉な、列車の音
③ 不吉な、点描的に刻む低音
「音楽」というよりは「効果音」です。
この後に関野が命を絶つこと(良くないことが起きること)を
観客に感づかせます。
実際に映像では
命を絶つ瞬間は見せていません。
「家族へ電話する行為」に加え、
線路脇の茂みに置かれた「カバン」「ハット」、
暗示的な要素としては
これらが表現されているのみ。
内容の方向が明確なものになり、
次シーンの関野の部下たちの会話で
詳細内容が説明される形となっています。
「店内BGM」の工夫 〜使われる位置と使われる音色〜
何度か出てくる銀座のバー「RED MOON」の場面では
店内BGM(状況内音楽)がかかっています。
本編17:30頃の場面では
映像が店の看板文字「RED MOON」を見せるので
その時に流れている軽い音楽が
「状況外音楽」ではなく「店内BGM」だと把握可能。
本編35:50頃の場面では
音楽が曲頭からではなく途中からかかっていますが、
映像が店内の飾りに書かれている「RED MOON」の文字を見せます。
したがって、
問題なく「店内BGM」だと把握可能。
本編38分頃の場面では
映像こそ「RED MOON」の文字を見せていませんが、
本編17:30頃の場面で流れたときと
「同じ音楽」が「同じ位置(曲頭)」から使われるので
それが記憶にさえあれば
「店内BGM」だと把握可能。
ちなみに、
曲頭はピアノから始まるのですが
この映画では
ピアノを ”綺麗な” 音楽として使用している箇所は
店内BGMの場面のみ。
(「不吉な効果音」として使用している箇所は他にもあり)
したがって、
本編38分頃のバーの場面では
「ピアノの音」という音色の面でも
「店内BGM」だと瞬時に予想することができます。
「終」を告げる、明るい和音
ストーリーの題材もあり、
バーの場面以外は
暗重く不吉な音楽ばかりが使われています。
ラストシーンも重い音楽が流れますが、
一方、
いちばん最後に
映像が「終」の文字を見せる瞬間は
音楽が明るくなります。
(音楽的に言うと「メジャーの和音」が使用)
ストーリーが明るく終わるわけではないのですが、
この音楽演出は
「”終”を告げる説明的なもの」だと言えるでしょう。
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