今回は、
成瀬巳喜男監督映画「石中先生行状記」(1950年)
を題材に
「終わりを思わせる ”めでたし音楽”」について
取り上げていきます。
本作は全3話からなるオムニバス形式をとっていますが、
3つの話のすべてに共通している音楽演出があります。
「終わりを思わせる ”めでたし音楽” が付けられている」
ということ。
各話の終了の数十秒前になると、
それまで流れていた音楽のボリュームが上がることで
いかにも
「終わりますよ」
というのを感じさせる雰囲気に変化します。
「めでたし、めでたし」
を説明的に分からせる意図があるのでしょう。
特に、
「第2話 仲たがいの卷」では
音楽のボリュームが上がったとほぼ同時に
そのテンポまでゆっくりになる。
したがって、
よりはっきりと
「終わりますよ感」が伝わってきます。
ちなみに、
こういった ”めでたし音楽” は
ミュージカルなどの舞台作品でもよく使われますが、
舞台作品の場合、
音楽で「終わりますよ感」がただよってきたと同時に
客席から拍手が起こったりします。
観客も「これで終わりなんだろうな」と分かるからでしょう。
逆に言えば、
まだ作品が続くときには
こういった大きな段落感がつくような音楽演出は原則出てこれない
ということでもありますね。
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