「キュー・シート(Cue Sheet)」には
その映像作品全編における
「音楽の入りの時間と終わりの時間」
が書かれているタイミングシートです。
その劇作品に出てくる音や音楽が全て一覧化されています。
それに対して、ブレイクダウンノーツ(Breakdown Notes)とは、
例えば「1m15」と書かれていたとしたら、
1m15という単独楽曲の場面がどのように変わっていくのかが書かれているシートのことです。
つまり、「1曲あたりの詳細情報」が書かれています。
アメリカなどでは短い楽曲にも必ずついていますが、
日本のプロジェクトでは作る習慣があまりありません。
【ブレイクダウンノーツの例】
これは分かりやすいように簡潔に書いた例で、
実際はカットについてなどもう少し細かく書かれることがあります。
例えば、
「登場人物が歩いていき、右に曲がる。その後、転ぶ。そして泣き出す。」
というシーン全体に音楽が鳴っているとします。
音楽としては、ずっと平坦な音楽でも成立しますが、
特にアニメーション映画などで「説明的な音楽」が求められる場合には、
「転ぶ」「泣き出す」という印象的な箇所で
音楽も従属するように変化させることがあります。
(これが過剰になったのが「ミッキーマウシング(Mickey Mousing)」です。)
この場合、「転ぶ」「泣き出す」などといったタイミングを
ブレイクダウンノーツに記すわけです。
このタイミングのことを「シンクポイント」と呼びますが、
日本では「ラップ」という言い方もします。
ブレイクダウンノーツには何でもかんでも書かれているわけではありません。
重要なシンクポイントについては記しますが、
逐一動作などが書かれることは少ない。
というのも、あくまでも “音楽の” ブレイクダウンノーツですので、
「ここでアクセントが入る」「ここでブレイクが入る」などといったように
音楽的に何か変化があった方がいいだろうと思う箇所だけ書かれていればいいのです。
つまり、上記の「登場人物が歩いていき、右に曲がる。その後、転ぶ。そして泣き出す。」
というシーンで、
「転ぶ」「泣き出す」というタイミングだけ音楽に変化を与えるのであれば、
「右に曲がる」というアクションについてはブレイクダウンノーツに記す必要ありません。
「作曲家が作る楽曲に対しての音楽的な設計図(メモ)」と言えるでしょう。
これは先ほどと同じシートですが、
詳細の読み取り方に触れておきます。
この音楽が使われている作品のタイトル。
例えば映画作品の場合、その映画のタイトルが記されます。
◉「Cue」
「キューナンバー」と「キュータイトル」が記されます。
この例では、「15曲目の、”ショック” というタイトルの楽曲」と読み取ります。
◉「Time Code」
タイムコード。この音楽の入りの箇所が記されます。
この例では、
「劇作品の、2時間12分2秒13フレームからこの音楽が始まる」
という意味です。
◉「Relative Time」
実時間が記されています。
この音楽の時間経過がその時点でどれくらいなのかということ。
したがって、最初は必ず「0.00」になります。
◉「Description」
その時点で映像がどういった状態なのかを箇条書きにした説明欄。
ブレイクダウンノーツは
「ミュージック•エディター(Music Editor)」が作成しますが、
ミュージック・エディターが置かれずに
監督と作曲家とのやりとりだけで進めていくプロジェクトでは、
ブレイクダウンノーツ自体を作曲家がおこします。