「棺桶を打つ実音」と「木質のパーカッション」との併置

 

映像内では「環境音」「生活音」など、
音楽以外にも様々な音が出てきます。
状況内音楽」というよりは「状況内の音」と言えるでしょう。

これらのような「状況内の音」の特徴を
音楽面でも応用している例があります。
具体例として、
篠田正浩監督映画「無頼漢」(1970年)
を取り上げます。
登場人物の一人「棺桶屋の主人」が棺桶を打つ
「コンコンカンカン」という音が
「状況内の音」として印象的に響きますが、
音楽でも木質の「コンコンカンカン」という音が
パーカッションで奏でられるのです。
これにより、
映像と音楽との共通点ができることによる統一感が生まれます。
似た音色同士を
観客がはっきりと分かるように併用提示したわけです。

この映画での音楽制作は
間違いなく「フィルムスコア(リング)」ですから、
映像が出来上がった後に、
その映像をもとに音楽が制作されているはずです。
おそらく、
出来上がった映像を観た作曲家が
棺桶を打つ音に注目し、
それを音楽にも応用させたのでしょう。
(もしくは、音楽の打ち合わせでそういった要請があったかのどちらかです。)

 


 

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