「伏線」について、
その表現が「映像」と「音楽」の両面でとられている例をご紹介します。
市川崑監督映画「おとうと」(1960年)
の前半中頃、
「げん」が、おとうと「碧郎」の引き出しをあさっている場面があります。
この際、
碧郎が家に帰ってきたタイミングに合わせ、
緊張感のある音楽が流れ始めます。
これだけでも充分に伏線の効果にはなっているのですが、
映像としても
家の中に立て掛けてある「ハタキ(掃除用具)」が倒れるという演出をし、
「映像」と「音楽」の両面で伏線がはられました。
碧郎が
「何探してるんだ?人の引き出し開けて」
と話しかける少し前まで音楽が続き、
「げん」の行為を暗示させるような効果が出ています。
しかし、
音楽自体も恐怖を感じる表現になっていますし、
内容と前後関係から考えると
ここの伏線はやや過剰のようにも感じます。
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