朗読音楽の役割

 

朗読と音楽が合わさった、
「ラジオドラマ」「オーディオドラマ」
などと呼ばれる作品における音楽の役割はどうでしょうか。
(本記事では「朗読作品」と総称しています。)

視覚的刺激の代わりを担う「描写音楽」

朗読作品では当然ながら視覚的刺激がありません。
したがって、
視覚的刺激の代わりを担う「描写音楽」が用いられるケースも多くあります。

例えば、「雪がふわーっと」などという朗読のところに、
その情景を思わせるような効果音的な音楽をつける
などといったケースが当てはまります。

他によく聴かれる手法としては、
アコースティック・ピアノの高音に
比較的ゆっくりなディレイをかけた音を使うことで
「水の中の透き通った世界」を非常に上手に表現しているケースなど。

 

ある状況を喚起する音楽

描写音楽と似た傾向のものとして、
ある特定の状況と結びついた
「効果音の役割も兼ねた短い音楽」も非常に多く聴かれます。

例えば、朗読作品や映像作品に垣根なく使用される手法として、
「主人公がヒロインに告白したシーンで、甘い言葉を告げた瞬間に楽器の印象的な《駆け上がり》が使われる」
などといったケースが当てはまります。
描写音楽とは異なりますが、
告白されたヒロインの「はっ」とした気持ちを強調した例であり、
「心理的な動き」が楽器の音を通して
具体的なイメージとして観ている側に伝わりやすくなります。

 

物語の始め方「どこから音楽を始めるか」

繰り返しますが、
特別な企画でない限り
朗読作品の場合は視覚的要素がありません。※
したがって、
特に物語の始めの部分は
「音楽から始めるか」「朗読から始めるか」「同時に始めるか」
によって、
聴衆の耳につくポイントが異なり
印象が大きく変わってくる点もポイントとなります。
劇がない分、聴覚的な情報が全てですので、
物語の途中でも当然ながら
「音楽をどこで切って、どこから始めるか」という点は重要です。
物語の締めくくりの部分も同様。

※舞台朗読劇などの場合は、朗読者の身体的な動きも視覚的要素になります。

音楽から始める場合

「音楽→朗読」の場合は、
音楽のキューできっかけを与えて朗読が入ることが多く、
音楽と朗読が重なることはあまりありません。
表現上、音楽がオープニング音楽の役割を持っているため、
朗読がフライングして入ってきたような印象を与えてしまうからです。
「タイトルコールの後に音楽を単独で聴かせて、それが終わったら朗読が単独で出てくる」
といった物語の始め方は、最も定番とも言える方法です。

朗読から始める場合

「朗読→音楽」の場合は、
朗読の切れ目と音楽の入りを少し重ねる演出がされることもあります。
この場合、朗読が始まった時点で物語が開始しているので
音楽が重なって入ってきてもフライングして入ってきたような印象にはなりません。

朗読と音楽を同時に始める場合

同時に提示する演出もよく見られます。
仮にこの状態で進行していき、朗読が先に沈黙したとします。
その場合、音楽が少し残ることになりますが、
この演出手法は業界用語で
「こぼす」「流し込む」
などと呼ばれています。
「時間経過を表現する意図」で用いられることがある演出です。

補足  -ブリッジ-

「朗読→音楽」の後にふたたび “単独で” 朗読が続く場合、
間に挟まれた音楽は「ブリッジ」として朗読の断片同士をつなぐ役割になります。
ブリッジは「A→B」のように異なる朗読内容をつなぐ場合もあれば、
「A→A’」のように「つながりはあるけれども少し違う」
といった朗読の断片同士をつなぐケースもあり、
それらのどちらかによって
音楽の内容にも多少演出上の違いが出てくるのは当然のことです。

効果的な音楽

背景音楽全般では
「その場面の音楽が効果的だということが、
一般的にいわれるいい曲であるということよりも重要になるケースもある」

とされています。
朗読に付けられる音楽に限ったことではありませんが、
とりわけ上述のような「描写音楽」ではその効果を実感しやすいため取り上げました。

当然ながら、
朗読に付けられた背景音楽にも
繰り返し」や「対位法」などをはじめとする各種手法は
用いられることがあります。