「状況内音楽」と「状況外音楽」

本記事は以前に「リアルサウンド」で執筆した自身の原稿をもとにしています。

 

状況内音楽

劇作品の中では「状況内音楽」が使われることがあります。
これは、「ストーリーの中で実際に聴こえている音楽」。
例えば、音楽大学を舞台にしたドラマなどでは
「実際に楽器を弾くシーン」に合わせて音楽が流れますが、
これは「状況内音楽」に分類できます。
「店の中で店内BGMがかかっているシーン」
なども、音楽としては状況内音楽。
この場合、
誰もが知っている既存曲が使われると
「状況内音楽」と認識されやすいですが、
そうでない場合は
店などのBGMとはきこえずに
外的につけられた音楽、
つまり「状況外音楽」と区別しにくい傾向にあります。

また、仮にこれが飲食店の場合、
例えば「トルコ料理屋でトルコの音楽を状況内音楽として使う」
という音楽演出をすることで、
作品に登場する店が「何の専門店なのか」ということが
音楽を通してすぐにわかるように工夫されているケースも多く見られます。

 

状況外音楽

「状況外音楽」は
「ストーリーの中で実際に聴こえていない音楽」で、
背景音楽として外的に加えたもの。
背景音楽のうち「状況内音楽以外の楽曲」のことを指しますので、
「サウンドトラック盤に収録されている楽曲」
などのうちほとんどは「状況外音楽」ということになります。
したがって、
一般的には劇作品には状況内音楽より多く存在し、
どのような様式・ジャンルの音楽を用いるかが
作品本体の性格や方向性を決定づけます。

また、作曲家の坂田晃一氏によると、
状況外音楽においては「押し引き」が重要であるといいます。
基本的には音楽的に押していくけれども、
押してばかりではなく
適宜引く場所も混在したバランスの良い音楽が使われることが
状況外音楽においてポイントになるとのことです。