「状況内音楽」と「状況外音楽」は
特殊な効果を狙って同時に使用されることもあります。
(「状況内音楽と状況外音楽の同居」という記事に詳細を書いています。)
今回は、
数ある同居の例の中でも
「状況外音楽が状況内音楽を伴奏している例」
を取り上げます。
貞永方久監督映画「球形の荒野」(1975年)
のラストシーン。
観音崎の岩場で登場人物の「顕一郎」と娘の「久美子」が共に
童謡「七つの子」を歌う場面があります。
何故このタイミングで
この歌詞の童謡が歌われるのかについては
さまざまな解釈があります。
一方この記事では、音楽のサウンド面に絞って記述します。
まずは、「状況外音楽」としての背景音楽が流れ始めます。
その後、「七つの子」が「状況内音楽」として追加されます。
(登場人物が実際に歌っているので、状況 “内” 音楽となります。)
注目点としては
歌がいわゆる「無伴奏」だということ。
したがって、
まるで状況外音楽が状況内音楽を伴奏しているかのように聴こえてくるのが
面白いところです。
付けられている状況外音楽は決して明るい曲調ではなく
七つの子のメロディに影を与えています。
ラストシーンで父娘が出逢ったとはいえ、
ストーリーの内容から考えてハッピーエンドではありません。
そういったことから判断して
音楽演出の面でもラストシーンに余韻を残す意図があったはずです。
状況内音楽でも
例えば
「ピアノを弾いている」
という内容の場合は、
基本的には「無伴奏」の状況内音楽ではないので
今回のような音楽演出はできません。
状況内音楽や状況外音楽は
それぞれの内容によって
組み合わされることによる表現内容にもバリエーションが出てくるので
音楽演出の可能性を広げることができます。
本記事の内容と似ているようで異なる音楽演出について
「状況内音楽を伴奏する状況外音楽②」
で取り上げています。
貞永方久監督映画「球形の荒野」(1975年)は
2022年現在、「U-NEXT(ユーネクスト)」でも観ることができます。
(視聴時期によっては、配信終了している可能性もあります。)
◉ <あの頃映画> 球形の荒野 [DVD]