以前に記事にした、
「状況内音楽と状況外音楽の同居」
「情景を説明する音楽」
この2つの音楽演出が ”同時に” 出てくる例をご紹介します。
一例ではありますが、
木下惠介監督映画「カルメン故郷に帰る」(1951年)
の開始15分くらいの箇所に発見できます。
校長先生が
「いつ見ても浅間はいいなあ」
と言うその一言をきっかけに
それまでの「軽い曲想の音楽」が「ホルンソロの柔らかい曲想」に変わります。
そして、
校長先生がご機嫌に歌を歌い出すので
「校長先生の歌」という「状況内音楽」と
「ホルンソロ」と言う「状況外音楽」が
同居した音楽演出となっています。
通常ですと、
2つの異なる音楽が同時に使用されると
それらがぶつかり合うことである種の不協和が生み出されるために
使用箇所を選びます。
しかしここでは、
「ホルンソロ」「校長先生の歌(ソロ)」
という非常にシンプルな音楽同士が同時使用されるので不協和感は薄く、
むしろ、
ホルンが校長先生の歌を伴奏しているかのような印象さえ感じられる効果が出ています。
ここまでが「状況内音楽と状況外音楽の同居」です。
もう一つ注目したいのが、
これら2つの音楽要素がどちらも
「情景を説明する音楽」
になっているということです。
ホルンソロというのは、
「山」「昼間」「郵便ラッパ」などを思わせる音として知られています。
実際には「郵便ラッパ(ポストホルン)」というのは、
ホルン奏者ではなく、
フリューゲルホルンなどを用いてトランペット奏者が演奏します。
しかし、通常のホルンの音も類似したものとして聴衆に把握されるのでしょう。
校長先生が歌う歌の中にも
「浅間」という歌詞が織り込まれています。
さらには、
校長先生が歌し出した直後にカットが変わり、
浅間山麓が映し出されるのです。
(浅間山麓で校長先生が歌っていたということです。)
「ホルン」「校長先生の歌」という、
「これら2つの音楽要素がどちらも映像で映し出される “山” という情景を説明する音楽になっている」
という点がポイントです。
「状況内音楽と状況外音楽の同居」
「情景を説明する音楽」
これらの演出は単体で使用されることもありますが、
今回の例では
組み合わされて使用されている点が
面白い演出と言えるでしょう。
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