2地点同時使用の状況内音楽

 

滝沢英輔監督映画「絶唱」(1958年)
の劇音楽より
いくつかの音楽表現について触れていきます。

2地点同時使用の状況内音楽

召集令状が来たことで順吉(小林旭)は
戦地へ行くことになりましたが、
小雪(浅丘ルリ子)と順吉は
毎日決まった時間に2人で「木挽唄」を歌おうと約束していました。

その後、
「順吉が戦地で木挽唄を歌う」
「同じ時間に小雪が歌う」
という場面があります。
「カット・バック」という手法でお互いが交互に映し出され、
その木挽唄が「状況内音楽」として響きます。

「小雪のショットでは順吉の歌は静かに」
「順吉のショットでは小雪の歌が静かに」
といったように音声バランスがとられており、
ふたりの歌声が同時に響いています。
「2地点同時の状況内音楽」
と言えるでしょう。

「ふたりがいる2地点の距離が遠く離れていることを、より一層強く感じる」
このような効果を体感することができますし、
おそらく演出意図もそこにあったはずです。

「2地点同時の状況内音楽」はたまに聴かれますが、
通常の状況内音楽に比べると、
その使用例は圧倒的に少なくなります。

時間経過を表現する短い音楽
物語後半に差し掛かった頃、
「インタータイトル(中間字幕)」として、
「昭和二十一年 秋」
と映し出されます。
つまり、「戦争が終わった」ということですね。

このインタータイトルの箇所に合わせて
ごく短い音楽が流れます。
こういった音楽は「ブリッジ(つなぎ)」の役割を果たし、
時間経過に合わせて使用されることが多い
音楽演出の頻出例です。

 


 

滝沢英輔監督映画「絶唱」(1958年)は
2022年現在、「Amazon Prime Video」で観ることができます。
(視聴時期によっては、配信終了している可能性もあります。)

» Amazon Prime Video「30日間の無料体験」はこちら

 

◉ 絶唱