3種の音で緊張感を表現

 

劇と音楽を使った緊張感のコントロール」という記事の中で、
「音楽要素による緊張感のコントロール」について
以下の2パターンを挙げました。

◉ 音楽そのもので緊張させて、それを解放する
◉ 劇の要素で緊張感を解放した瞬間に音楽を流す
今回はその中でも
「音楽そのもので緊張させて、それを解放する」
という音楽演出がとられている例をとりあげます。
市川崑監督映画「満員電車」(1957年)の後半部分で、
主役の茂呂井民雄が高熱でうなされている場面があります。
この際に流れている音楽は
パーカッションで均等なリズムを刻んでいます。
均等なリズムを聴かせる方法は
緊張感を感じさせるための代表的な音楽表現です。
【補足】
似た例として、
スティーヴン・スピルバーグ監督映画「ジョーズ」(1975年)
の有名なテーマ音楽でも
均等なリズムを聴かせることで
緊迫した雰囲気を表現しています。
さらに、
映画「満員電車」では
「パーカッションで均等なリズムを刻んだ音楽」
のみならず、
「茂呂井民雄がうなされて何度も立てる声」
「時計の針が刻む音」
という計3種の刻む音要素を併置することで
よりいっそう緊張感を強いものにしています。
余談ですが、
この映画では後半に行けば行くほど
段々とコメディ要素が強くなってきます。
しかし、
音楽自体でコメディ的な音を使うことはしていません。
音楽としてはオーソドックスなものですが
それをあえて「大袈裟な表現」でつけることで
映像自体が面白く見えるように工夫されている点が特徴となっています。

 


 

市川崑監督映画「満員電車」(1957年)
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