本記事は以前に「リアルサウンド」で執筆した自身の原稿をもとにしています。
アコースティック・ピアノ(以下、「ピアノ」で統一)の音色を用いた背景音楽は
非常に多くあります。
その主な使用例は以下の3点です。
2、ピアノと他のアコースティック楽器とのアンサンブル
3、メインは他の楽器が担当する中で、アクセントとしてのスパイス効果
ピアノの音色はその澄んだサウンドもあり
「新しく」聴こえてしまう可能性が高いといった理由から、
一世代前が舞台になっている劇作品や、
更に以前の時代をテーマにした時代劇などの劇音楽では、
比較的使用が避けられてきたという背景があります。
特に、
上記3の用法の時に
映像の中で「新しく」聴こえてしまう傾向が強いと映像関係者も話します。
しかし、
楽器編成が西洋音楽で古くから使われてきた
弦楽器や木管楽器などによるものが中心である場合や、
和声進行などの構造の面などからみて
古典的なスタイルで書かれた劇伴が中心に構成される場合、
ピアノの音色を大胆に使用しても
劇作品とのバランスに関して違和感なく響かせることが出来ます。
実は、劇音楽を純粋なピアノだけの編成で構成していくことは意外と難しいのです。
なぜなら、ほとんど音色の変化をつけられないためです。
もちろん「演奏法」や「プログラミング(打ち込み)のテクニック」
によって音色に変化をつけることは可能ではありますが、
それはあくまでも「ピアノが出せる音色の中での変化」となります。
ピアノ・ソロばかりの劇音楽でも成立するのは
例えば、
ソロ楽器という編成を活かして
「即興的要素を強く打ち出した音楽にした場合」
などが挙げられます。
即興性が強い場合、観客はパターンを予測しにくいため、
「ああ、またか」という認識を和らげることが期待できます。
また、
「環境音による聴覚的な補佐」が多くある場合や、
「音自体に電子加工でバリエーションを与える」といった場合にも、
この編成に偏った劇音楽が成立することはあるでしょう。
その他の例としては、
以下の記事をご覧ください。
「〜教室の子供たち〜 舞台設定と音色との関係」