「複数シーンで共用される状況内音楽」
という記事の中で、
各状況内音楽に音量差をつけることによる
「音源と各シーンとの距離感の演出」について触れました。
今回は、
その距離感がもっと細かく表現されている映画をご紹介します。
野口博志監督映画「拳銃無頼帖 不敵に笑う男」(1960年)
この映画の終盤、
「祭り」の場面があります。
この祭りでの
太鼓や笛を使った「状況内音楽」が
4つのポジションで共用されています。
① 祭りの音が鳴っている、その現場
② 見付海岸
③ 駅
④ 登場人物「博子」の店の中
② 見付海岸
③ 駅
④ 登場人物「博子」の店の中
①〜④まで全て「祭りの音が聴こえる範囲内」なので、
同じ祭りの音を状況内音楽として共用できるわけです。
時系列としては上記の順番で出てきますが、
音量としては
大きい順に…
◉ 祭りの音が鳴っている、その現場
◉ 駅
◉ 見付海岸
◉ 登場人物「博子」の店の中
◉ 駅
◉ 見付海岸
◉ 登場人物「博子」の店の中
このような順番になっています。
「祭りの音が鳴っている、その現場」で一番大きい音量になるのは当然。
次に大きかったのは「駅」でした。
つまり、
「見付海岸」よりも「駅」の方が
祭りの現場に近い距離にある、
ということがはっきりします。
「博子の店」の音源からの距離は
判断が難しいところです。
祭りの音楽としては
「駅」や「見付海岸」のシーンでの方が大きく聴こえますが、
「博子の店」は「屋内」という設定なので
閉め切りの遮音効果などにより
単に音量を小さめにしただけかもしれません。
このように
少し判断できない点はありますが、
状況内音楽の大きさで「距離」を示し分ける演出としては
充分に工夫されている映画と言えるでしょう。
【補足】
ちなみに、
「博子の店」では
はじめは「状況内音楽(祭りの音楽)」が聴こえていますが
途中から「状況外音楽(通常の劇音楽)」へ移行します。
実際には祭りの音楽は聴こえているはずなので、
細かいことを言えばリアルではありません。
おそらく、
映像を物語として進めていかなくてはならないために
適当なところで状況外音楽を優先したのでしょう。
ちなみに、
「博子の店」では
はじめは「状況内音楽(祭りの音楽)」が聴こえていますが
途中から「状況外音楽(通常の劇音楽)」へ移行します。
実際には祭りの音楽は聴こえているはずなので、
細かいことを言えばリアルではありません。
おそらく、
映像を物語として進めていかなくてはならないために
適当なところで状況外音楽を優先したのでしょう。
野口博志監督映画「拳銃無頼帖 不敵に笑う男」(1960年)は
2022年現在、「Amazon Prime Video」で観ることができます。
(視聴時期によっては、配信終了している可能性もあります。)
◉ 拳銃無頼帖 不敵に笑う男 [DVD]