状況内音楽としての「調性音楽」を新鮮に聴かせる演出

 

どのような様式・ジャンルの音楽を用いるかが
劇作品本体の性格や方向性を決定づけます。

例えば、
大島渚監督映画「少年」(1969年)では、
全編にわたって「無調音楽」が使用されています。
完全な無調の音楽はもちろん、
別のシーンの音楽として
わかりやすいハーモニーやメロディが現れる場合でも
常に不協和な音が付着しています。

こういった音楽の方向性により
「当たり屋」で生計を立てる一家を描いたストーリーに対して
影が伴った演出をしています。
一方、
映画終盤に少し新鮮な音楽演出があります。

一家で雪道を歩いている際、
「クリスマスの練習としての讃美歌」が
状況内音楽」として聴こえてきます。
古典的な讃美歌は当然「調性音楽」であり、
とても分かりやすいハーモニーとメロディでできているため
それまでにひたすら無調音楽しか出てこなかったからか
妙に新鮮に聴こえるのです。

全編が調性音楽で演出されている場合は
このような新鮮さはまず感じません。
それに、
たった一回このシーンでだけ調性音楽が出てくるというのが
全体の構成を引き締めたものにしています。

 


 

大島渚監督映画「少年」(1969年)は
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(視聴時期によっては、配信終了している可能性もあります。)

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◉ 少年