「軍隊の楽器」を用いた音楽演出

 

今回は、
市川崑監督映画「野火」(1959年)
を題材に
軍隊の楽器を用いた音楽演出について
取り上げていきます。

フィリピン戦線でのレイテ島がストーリーの舞台。
田村(船越英二)は軍隊および病院から見放されます。

ストーリーと音楽との共通点を感じるのが、
使用されている楽器面。
スネアドラムやシンバルなどのパーカッション、および金管楽器などは
「軍隊の楽器」として知られているもの。
メインテーマはもちろん、
本編で使われる音楽では
こういった軍隊の楽器のサウンドが何度も使われています。

これは明らかに意図してのことだと考えていいでしょう。
一般的にどんな映画作品の音楽でも
使用されることの多い楽器ではありますが、
本作のような戦争もので使用されると
否応なしに「軍隊の楽器」として強く意識されます。

あわせて
「軍隊の楽器」の音が効果的に使用された場面を
ひとつ取り上げておきます。

本編68分頃、
兵士から
「俺が死んだら、ここ(腕)を食べてもいいよ」
と言われて
田村が逃げるように立ち去る場面。

兵士へ背を向けて歩き始めたときには
重さを感じるパーカッションの連打(ロール)が使用され、
その連打が終わって音楽が軽くなると同時に走り出します。

ただ単にタイミングが合わせられているだけでなく、
「映像の表現と音楽の表現の内容移行まで細かくコントロールされている」
という点で
注目すべき演出となっています。

 


 

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